弐のうそ作品一覧

『FALLING』

主人公アベコは無意識に夜な夜な街を彷徨っている。昼間会社でもミスばかりして鈍臭いアベコを心配そうに見守る同僚のいずみ。だがアベコは悪巧みばかりしている梨花の言いなりになっている。梨花のことが好きなのだ。イラつくいずみ。そんな中、金を奪う為に梨花とアベコはカップルを襲撃する。刺されて死ぬアベコ。しかし、ヴァンパイアとして復活する。

DATA

監督・脚本:加藤麻矢(かとうまや)
26min./DV/16:9
キャスト:春山怜那 山田ゆり 西山真来 長谷部涼 福田英史 八坂美姫 相良洸
撮影:伊藤淳/照明:玉川直人/録音:成清翔太/美術:大畑創、比木暁/制作:松井一生

メイク:弾塚凌/特殊メイク:成田真奈美/音楽:貝塚治樹、others/整音:間野翼

監督 加藤麻矢

profile

1982年生、名古屋市出身。2005年上京、映画美学校9期フィクションコース初等科入学。Vシネマ等の助監督や脚本に関わりつつ、自主制作で『排卵前夜』を監督。現在フィルムのテレシネ・編集スタッフとして就業中。

message

ヴァンパイアは文明の発達と共に進化している-。かつての意外と簡単に殺せる者達ではなくなっている事を、アン・ライス著のヴァンパイアクロニクルズシリーズや近年のヴァンパイア映画で知りました。そんな驚異的な彼らに思いを馳せていた頃、自然に書けたシナリオです。

コメント

面白かった。こういう吸血鬼映画はありそうでない。この「ありそうでない」感じとは、独自のキャラクターを発見し、そのキャラクターから台詞が発せられていることにあるのだけれど、シナリオを読んだ時まさにそれを感じ、「加藤さん、難しく考えず、すぐに撮った方がいいよ」と言ったのだ。で、「うわ、本当に考えなかったんだ」と何度も動揺させられるザッツ・自主映画が出来上がったのだが、自分が期待したのはまさにこのノリであり、ちょっとロメロの『マーティン』といった70年代低予算映画の荒々しさすら思い起こした。まさか「桃まつり」で上映されるとは思わなかったが、しかし、それよりもはるかに予想を超えていたのは、女優陣のドンピシャなキャスティングで、段ボールを片付けようとしてコケるアベコのハッとさせられる一瞬とか、報われぬ恋の相手を見上げるブランコのシーンとかなかなか撮れないショットである。加藤さんはいったい考えているのか、考えていないのか、自主映画だと油断していると、普通こういう映画では起こらないことまで起こるから、観客は映画の現在って……と動揺するに違いない。その意味で「桃まつり」でやれてよかった。ちなみにシナリオのタイトルは『信仰の熱い私たち』で(「“熱い”は誤字じゃないの?」と言ったら「敢えてです!」と言い返された)、僕はこっちの方がよかったが……。
高橋 洋(脚本家・映画監督)