壱のうそ作品一覧

『迷い家』

少年は走る。必死に、何かから逃げるように。全てから逃げるように。
山の中を走り続けた少年は立派な作りの一軒家に辿り着く。そこでひとり暮らす美しい女性が少年を待っていた。
そして少年と女性との奇妙な共同生活が始まった…。

DATA

監督・脚本:竹本直美(たけもとなおみ)
20min/HDV/16:9
キャスト:染谷将太 河井青葉
撮影・照明:田辺司/録音:鈴木昭彦/助監督:鳥井真生/メイク:橋本申二(atelier ism)長窪美恵(atelier ism)
編集:麒麟児/音楽:村尾なつめ

監督 竹本直美

profile

映画美学校第二期卒業。在学中『夜の足跡』(01/万田邦敏)に製作助手として参加。その後、数々の自主映画にスタッフとして参加し、2006年、万田邦敏監督とともに映画上映会「十善戒」を主催、2008年「Canadian Docu Days-知られざるNFB/ONFドキュメンタリズム」企画上映運営スタッフとして参加。2007年「桃まつり」で『明日のかえり路』を初監督、『あしたのむこうがわ』(08)、『地蔵ノ辻』(09)を「桃まつり」で続けて発表する。

message

『迷い家(マヨイガ)』とは、東北、関東地方に伝わる奇談に登場する家屋です。迷い人が辿り着く桃源郷のような場所で、柳田國男著「遠野物語」にも紹介されています。私は、「マヨイガ」とは、現実世界に疲れた人の一時的な休息の場だと思います。この作品世界に迷い込んだ少年も現実から逃れ、この家で癒され成長し現実に帰って行ったのでしょう。

コメント

「見るな」と言われれば見たくなる。それって見てほしいってことでしょーって純粋に思う。言ったのは山奥の日本家屋に独りで住む美女だし、なんかシチュエーションからしてエロいし。
でもここまで的確に蛇口から水滴が漏れ、引き戸がきしみ、鳥がピーチクパーチクさえずっていたら、やっぱり見なきゃよかったと思う。
この少年はエロさから程遠い、世にも恐ろしいものを目にしてしまうのだから。
佐向 大(映画監督)
映画なんてどうせ「うそ」なんだ、そんなこと当然と、真正面から平然と「うそ」を切り取り、容赦なく異世界を作り上げて、そして見せつけてしまう。
そんな堂々とした揺るぎのない強引さを竹本さんも作品も持っています。
瀬田なつき(映画監督)
「むこうがわ」の作家である竹本直美監督が柳田的な伝承世界に迷い込んだことは幸福な必然だ。舞台となる古民家そのものが放つ尋常でない磁場のなかで、「物語」は削ぎ落とされ一幅の画へとあたかも回帰してゆく。小鳥のさえずりに始まりノイズへと至る音響によって、柳田的世界を立体的に読み替える20分の映画的昏迷。
萩野 亮(映画批評家)