少年は走る。必死に、何かから逃げるように。全てから逃げるように。
山の中を走り続けた少年は立派な作りの一軒家に辿り着く。そこでひとり暮らす美しい女性が少年を待っていた。
そして少年と女性との奇妙な共同生活が始まった…。
監督 竹本直美
profile
映画美学校第二期卒業。在学中『夜の足跡』(01/万田邦敏)に製作助手として参加。その後、数々の自主映画にスタッフとして参加し、2006年、万田邦敏監督とともに映画上映会「十善戒」を主催、2008年「Canadian Docu Days-知られざるNFB/ONFドキュメンタリズム」企画上映運営スタッフとして参加。2007年「桃まつり」で『明日のかえり路』を初監督、『あしたのむこうがわ』(08)、『地蔵ノ辻』(09)を「桃まつり」で続けて発表する。
message
『迷い家(マヨイガ)』とは、東北、関東地方に伝わる奇談に登場する家屋です。迷い人が辿り着く桃源郷のような場所で、柳田國男著「遠野物語」にも紹介されています。私は、「マヨイガ」とは、現実世界に疲れた人の一時的な休息の場だと思います。この作品世界に迷い込んだ少年も現実から逃れ、この家で癒され成長し現実に帰って行ったのでしょう。
でもここまで的確に蛇口から水滴が漏れ、引き戸がきしみ、鳥がピーチクパーチクさえずっていたら、やっぱり見なきゃよかったと思う。
この少年はエロさから程遠い、世にも恐ろしいものを目にしてしまうのだから。
そんな堂々とした揺るぎのない強引さを竹本さんも作品も持っています。