壱のうそ作品一覧

『shoelace』

年の離れた既婚者・小野とずるずる付き合い続けている由季。そんな由季のことをまだ想い続けている元恋人の秋彦は、いたずらに小野の家に向かった先で、小野の娘・アミと会ってしまう。アミもまた、父親と別居暮らしの孤独な少女だった。父親の恋人の存在を知ったアミは、その人に会いたい! と秋彦に迫る。アミに呼び出され、会うことになる由季。そして二人は…。ゆるやかな時間の中でそれぞれの孤独が交差する、ある冬の物語。

DATA

脚本・監督・編集・音楽:福本明日香(ふくもとあすか)
26min/DV/16:9
キャスト:ともさと衣 滝澤史 杉山彦々 佐野和宏
撮影・照明:鈴木昭彦/撮影・照明助手:真弓信吾/録音:猪立山仁子/制作:上馬場健弘/ヘアメイク:橋本申二(atelier ism)小渕彰子(atelier ism)

整音:菊池信之/タイトルイラスト:山崎美帆

監督 福本明日香

profile

1977年熊本県生まれ。明治学院大学卒業。映画美学校第5期フィクションコース修了後、映画やテレビの助監督として現場入り。『愛妻日記』(サトウトシキ)、『一万年、後…。』(沖島勲)、『彼方からの手紙』(瀬田なつき)、「第三の時効」(榎戸耕史)、「我はゴッホになる!」(五十嵐匠)などのドラマ作品のほか、佐藤真、稲川方人、田中千世子などのドキュメンタリー作品に携わる。現在は、季刊誌「映画芸術」編集部に在籍中。

message

タイトルは「靴ひも」です。私自身、よく靴ひもがほどけてしまうのですが、そんなささいな出来事が、この映画のテーマとなりました。誰かと一緒にいたいのに、孤独に生きざるをえない登場人物たちの、靴ひもがほどける時、そして結ぶ瞬間を、彼らを取り巻く日常生活の風景と、たまには行きたい「どこか遠いところ」のなかで描いた作品です。

コメント

こんなに簡単に「映画」を作ってしまっていいんだろうか。自分には表現するもの、表現しなければならないものがあるのだろうか、と悩んでいた俺は「自主映画」を作れなかった。だから、俺は「映画」を「仕事」にした。「仕事」に必要なのは技術で、動機付けじゃないからだ。桃まつりで簡単にデビューしてしまった福本明日香にある監督の言葉を花束代わりに送ろう。
「弱い苗からは絶対に豊かな稔りは期待できない。弱いシナリオからは絶対にすぐれた映画は出来あがらない。シナリオの弱点は、シナリオのうちに退治しなければ、映画として救うべからざる禍根を残す。いかにすぐれた演出力をもってしても、それを救うことは出来ない。映画の運命はシナリオにおいて殆んど決定されるのだ。僕はまずよいシナリオをつかむことが演出術の第一歩だとさえ考えている」
荒井晴彦(脚本家)
主人公の少女のアミという名前は「友人」と同義語です。この大切な名前を持った女の子がこれからどんな生を生きるかを見ることは、彼女の周りにいる大人たちの真実なのに、その真実がどうも不具合です。こちらアミ、応答せよ、女の子は何度もそう言います。彼女のひとりぼっちのケンケンに、この映画を見るあなたがどう応えるか、それが試されています。少女アミの透明な笑みを再現する滝澤史の、背筋の伸びた容姿は必見です。
稲川方人(詩人)