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壱のすき 竹本直美『帰り道』
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15min./16:9/5.1ch/HDV/2012
監督・脚本:竹本直美
撮影:高橋哲也
録音・整音:鈴木昭彦
助監督:加藤学
編集:塩谷友幸
ヘアメイク:橋本申二/長窪美恵(atelier ism®)
音楽:SIESTA
制作応援:粟津慶子/榮元謙之介
整音助手:西垣太郎
監督補:榎本敏郎
キャスト:神農幸/高木彩那/阿部優香/小林千里/西沢利明
あらすじ
都会に憧れ出て行った奈美が、やむを得ない事情で田舎に戻る道中、幼い頃に川辺で会った老人のことを思い出す。奈美にとって故郷の象徴である老人の、子供の頃には分からなかった気持ちが分かり、そして、故郷で生きて行く決心をする。
制作意図
「帰りたい…」震災直後によく聞いた言葉。生まれ育った愛してやまない場所。以前、母や、祖母が「この場所(田舎)しか知らないし、此処を離れる事は出来ない」と言っていた事を思い出し、このふたつの言葉が重なり、彼らの思いを形の出来ないだろうか…と、この物語が生まれました。
監督プロフィール
竹本直美 TAKEMOTO,Naomi
1970年生。山形県出身。映画美学校第二期卒業。在学中『夜の足跡』(01/万田邦敏)に製作助手として参加。2006年、万田邦敏監督とともに映画上映会「十善戒」を主催。2007年「桃まつり」で『明日のかえり路』を初監督、08年『あしたのむこうがわ』、09年『地蔵ノ辻』、10年『迷い家(マヨイガ)』を「桃まつり」で続けて発表する。
コメント
竹本直美が「桃まつり」の回を重ねるごとに上手くなっているのは確かだろう。パソコンモニターの明かりだけに照らし出される主人公の顔とキーボードを叩く乾いた音、歩き続ける気力も失ったかのように街路脇の手すりに腰掛ける主人公と遠目に見える電車の走行音の響き。都会生活の疲れと故郷への誘いを正確に滲み出す冒頭の画面と音の連鎖には舌を巻く。しかし「上手いこと」と「面白いこと」とが必ずしも一致しないのが映画作りの難しいところだ。いったいぜんたい小学生のナミと見知らぬおじいさんとの間には、本当のところ何があったのか? それを描かなければ、たんに「画面がきれいだった」で終わってしまうではないか。それで終わらせるにしては惜しい何かがあるのだ。なんともじれったいゾ、竹本!
万田邦敏(映画監督)
私は過去二回竹本監督作品でこの世の者でなはい役をやらせて頂きました。
今回は友人でもある神農幸さんが、ちゃんと足のある人間の役を演じています。(いや、私のときも足はあったのですが。)
ちょっと嫉妬。
でも納得。
現実をちゃんと前を向いて歩いていく女性の姿が、私の知っている幸とピタリとハマりました。竹本さんさすがです。
竹本さんの作品は、いつも主人公が自分の力でほんの少しだけ前に進みます。このほんの少しってのがとても大事なことなんですよね。
河井青葉(女優)
ここでないどこか。帰りたいどこか。容易に帰れない場所はまた、離れられない場所でもあった。観客それぞれがそれぞれにきっと抱えている筈の心の場所を指し示し、こんな「すき」もあったと確かに効いてくる思いが胸に突き刺さる。
※全作品レビューより抜粋。全文はパンフレットをご覧ください。
川口敦子(映画評論家)