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弐のすき 熊谷まどか『最後のタンゴ』
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31min./16:9/STEREO/HDV/2012
監督・脚本・編集:熊谷まどか
撮影:境千慧子
録音:川原康臣
助監督:金沢勇大
制作:剣持清美
脚本・編集協力:田中智章
キャスト:幸田尚子/松岡依都美/郷志郎/杉浦千鶴子
あらすじ
結婚前提で同棲していた年下の彼氏・シュンジが突然部屋を出て行き音信不通に。レイコは納得がいかない。腹が立つ。『もう帰る場所なんてないから!!』とばかりにシュンジの荷物をさっさと処分し引っ越しの準備を進めているのだが・・・。
制作意図
例えば「嬉しい」なら笑顔が、「悲しい」なら涙が、共感を誘うきっかけになり得ますが、では「好き」というキモチが胸に広がるあの瞬間はどうすれば伝えられるだろう?と考えました。 「匂いの記憶」が、カチコチに固まった心を突き崩し、その下から素直な「好き」という感情があふれ出てきた体験って多くの方がお持ちではないでしょうか?
監督プロフィール
熊谷まどか KUMAGAI,Madoka
04年NCWにて自主制作映画を作り始める
おもな作品歴
05年『ロールキャベツの作り方』
06年『はっこう』(PFF2006グランプリ)
09年『嘘つき女の明けない夜明け』(文化庁委託事業ndjcにて制作)
10年『古都奇譚・秋』など
現在はPV・メイキング・TVなども手がける。
コメント
べルトルッチの『ラストタンゴ・イン・パリ』では名前や過去の無い男女が愛し合う。そして熊谷監督の『最後のタンゴ』では仕事や将来、希望の無い男女が愛し合う(憎み合う)。。 どちらも言えることは過去や未来はどうでも良く、「いま」を生きることしか出来ないということ。。。『最後のタンゴ』では、幸せな恋人時代において、二人は同じ時間や感情を共有していたとは必ずしも限らない。もしくは彼が出て行ったあと、二人の思いや感情は同棲時代よりさらに深く共有していたかもしれない。恋人同士とは一卵性双生児の様に喜怒哀楽を別れたあとも共有するものだ。
彼を最後まで登場させない、熊谷監督の『最後のタンゴ』によって、サド公爵夫人』や『8人の女たち』のように、物語において「男」は全く必要ないということが証明された。
ヴィヴィアン佐藤(美術家、ドラァククイーン)
熊谷まどかはエンターテイメントな人である。どんな時でも、どんな企画でも、まず観客に楽しんで貰うことに腐心する。それだけでも十分に魅力的な作家なのだが、特記すべきは、その根底にある<毒>の強さである。<毒>・・・もしかして真実。
今回の「すき」というテーマの中にもそれは十分に散りばめられている。絶妙な間と流れの中で。
熊谷まどかは、今後いろいろな出会いに反応しながらその世界を広げていくだろう。そしてその<毒>は確実に世界に蔓延する。
芦澤明子(カメラマン)
ホラーと笑いは紙一重で悲劇と喜劇も背中合わせ、
一寸先は“病み”か“妄想”か“思い込み”か――
と、観客をまんまと操り翻弄する脚本、編集、演出
唖然、ボー然となる。なりつつついつい惹き込まれる。
※全作品レビューより抜粋。全文はパンフレットをご覧ください。
川口敦子(映画評論家)