• 参のなみだ 糠塚まりや『葬式の朝』

    • 30min./16:9/stereo/AVCHD

                

      監督・脚本:糠塚まりや

      製作:諸田創

      撮影監督・編集:上田謙太郎

      カメラオペレーター:三間旭浩

      録音・整音:鈴木昭彦

      美術・衣装:本間美由紀

      音楽:重盛康平

      ヘアメイク:戸田翔一郎(atelierism©)

      助監督:敦賀零

      制作:高橋玄

      キャスト:丸井美登子/朝倉ふゆな/荒川恭一/矢島康美/大前由香/小綿照雄



    • あらすじ

      祖父が亡くなり、初美は実家へ戻ってくる。お腹が空いている初美だが、全ての食べ物をことごとく従妹の未来に奪われ、何も口にすることができない。何も食べられなかったまま、初美は夜中に祖父の線香を替えに棺の元へ向かう。祖父の死の実感がなかった初美は、祖父の棺のふたに手を伸ばす。




    • 制作意図

      中3の時に、おばあちゃんが亡くなり、大3の時に、おじいちゃんが亡くなった。中学のときは理由もわからず涙が出たのに、大学の時は少しも泣かなかったし、そのことに後ろめたさも覚えなかった。時間が経つにつれて、私の心には余計なものがくっついて、大切なことを感じられなくなっているのかもしれない。でも、お腹が空くってことは、生きている限り感じられる。それは、すごいことではないだろうか。

               



      Trailer


      監督プロフィール

    • 糠塚まりや NUKATSUKA, Mariya

      1988年2月4日の立春生まれ。高校の時にミュージカルに出会って以来、舞台や映画の脚本を書くことを学び、今に至る。東京芸術大学大学院映像研究科映画専攻修了。映像化作品にオムニバス映画『らもトリップ』の『微笑と唇のように結ばれて』(監督・今橋貴/2012)がある。現在は会社員。犬好き。



      キャストプロフィール

      丸井美登子(初美役) MARUI, Mitoko

      中学・高校と演劇部に在籍。演劇、ミュージカルの舞台に出る。大学では広告制作に携わり、現在は食品メーカー勤務。お腹の音を鳴らすのが得意であり、『葬式の朝』に使われているお腹の音は本人のものである。映画への出演は『葬式の朝』が初めてとなる。監督の糠塚まりやとは中学・高校の同級生。

      朝倉ふゆな(未来役) ASAKURA, Fuyuna

      1999年生まれ。2008年よりミュージカル『アニー』に出演。ケイト役を経て、2011年には主人公アニーを演じた。その他、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』に出演。映画への出演は今回の『葬式の朝』が初めてとなる。


      Comments

      ほんわかオフビートで、骨太。

      でもその骨が若いのに骨粗鬆症気味なれど、存外、たくましくて。センスがいいのに、だっさい服着てて。

      化粧っけのない顔がむっつりと可愛くて、ヘラヘラ笑う顔なんかアザラシかアシカみたいでたまりません。

      糠塚まりやはそんな女です。そんな女が創ったちょっぴりヘンテコで、しごく真摯な映画です。

      筒井ともみ(脚本家、東京芸術大学・大学院映像研究科教授)




      自殺しようとする人が首をくくる前に何となくおなかがすいたのでお茶漬けを食べてしまったりする。

      これがちゃんとした「ヌケた」人間のありようなんである。

      『葬式の朝』をみながら、映画とは関係のない、かつて中島らもが書いたエッセイ

      (「たまらん人々」最終回「大合掌」より 「ぷがじゃ」1987-12月号)を思い出していた。

       冒頭、主人公の初美のお腹が「ぐぅ」と鳴る。祖父の死で実家に帰ってきた彼女は腹が減っている。

      そんな彼女の前に現れる、美味しそうなものたちの色あいが美しい。

       塩むすび、マシュマロ、マグロのお刺身、そうして祖父の遺した〈生の記録〉。

       姉と妹、切なくて胸にしみるやりとりの間で腹が鳴る。

      「死」を実感するのは、そうした生きている私たちの日常である。

      小堀純(編集者)



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